未来へつなぐ放射線医療~信頼と技術~

教育講演

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教育講演1 第1会場 2階おしどり 9:20~10:10

座長 東海大学医学部付属病院  山本 和幸

脳梗塞に対する診断・治療

IMSグループ横浜新都市脳神経外科病院画像診療部  齋藤 誠

 現在、急性期脳梗塞における緊急的治療法にはアルテプラーゼ静注法と血管内治療血行再建の2種類がある。当院でも、この2種類の治療を積極的に行っている。急性期脳梗塞における治療では迅速性、安全性、確実性が重要であり、診療放射線技師もチームの一員として、『自分達に出来る工夫』をより積極的に行い、治療に貢献出来る様、努めている。迅速性においては、救急搬送到着前に事務より連絡が入り、MRI室および血管撮影室ヘ迅速に入室出来る様、コーディネー卜の工夫を行っている。安全性と確実性においては、MRI firstを実施する利点を活かし、大動脈弓部解離、頚動脈プラーク、不完全虚血領域ぺナンブラの精査等も重要と考えている。
血管撮影室での血管内治療血行再建術においても迅速性、安全性、確実性は重要となる。近年、血管撮影装置はFlat Panel Detector(FPD)の登場によって、ダイナミックレンジが広く、密度分解能が向上したデータを取得する事が可能となった。そして、広大なダイナミックレンジを臨床にて最大限に利用するには、希釈造影剤を用いたC-arm CBCTなどの回転撮影も有効となる。当院では急性期脳梗塞に対する血管内治療血行再建術の際、希釈造影剤を用いた回転撮影を術前に行い、様々な情報を得る事で手技への安全性と確実性を向上出来る様、術者サポートに活用している。また、迅速に対応するために撮影タイミングや画像処理を工夫している。さらに、患者の不穏による体動は回転撮影の描出不良を招くだけではなく、安全で迅速に行わなくてはいけない手技にも影響するため、頭部固定も当院では重要と考えている。
本講演では、血管撮影室を中心に、急性期脳梗塞における当院の治療の実態、救急搬送連絡からの流れ、血行再建術における希釈造影剤と回転撮影を用いた画像による解離、頚動脈プラーク、不完全虚血領域ペナンブラの描出、さらには血栓描出、閉塞血管および血栓遠位部血管描出画像による術者サポート、不穏による体動への対応など、診療放射線技師が積極的に行っている『自分達  に出来る工夫』について報告させていただく。

教育講演2 第1会場 2階おしどり 10:10~11:00

座長 横浜市立市民病院 田邉 頌章

脳動脈癌に対する診断・治療

社会福祉法人聖隷福祉事業団聖隷横浜病院 画像診断センター石毛良一

 脳動脈瘤の診断と治療は、一般的には術前診断、術中(治療:今セッションでは脳動脈瘤コイル塞栓術を主として扱う)、術後診断(follow up)という3 つの経過をたどるのが一般的である。このような一連の流れに沿って、手技の流れやデバイスの特徴を知り、治療ストラテジーの立て方を知ることで、我々診療放射線技師が脳動脈瘤の診断と治療にどのように介入し貢献していけばよいのかを解説する。
具体的に扱う項目については、1. 脳動脈瘤の好発部位、種類、治療適応、2. コイル塞栓前の3D Rotation Angiography (3DRA)撮影技術、3. Working Angle構築のための知識とポジショ二ングの工夫、4. 治療方針を決定し、ストラテジーとデバイス選択に直結する血管計測方法、5. 頭蓋内ステント評価のためのCone Beam CT (CBCT)撮影技術、6. 「診断のための画像支援」と「治療のための画像支援」について、7. 最新の脳動脈瘤治療、8. コイル塞栓術後の3DRA撮影技術、以上8 項目を予定している。
血管計測は経過観察と治療適応を決める1つの目安となり、我々の計測結果が患者さんの治療結果を左右すると言っても過言ではない。計測すべきポイントや注意点を知ることはもちろんだが、キャリブレーションや撮影方法が計測結果にどのような影響を与えているか、コイルサイズの決定にはどこの径が重要かなどを実際の症例を提示しながら解説する。また、近年のトピックスである希釈造剤CBCTを用いた頭蓋内ステン卜描出の撮影技術と考え方を、基礎データと臨床画像を織り交ぜながら解説する。さらに、近年コイル塞栓術増加に伴い、術後の診断カテーテルも増加傾向にある。すなわち、術後診断の着眼点と撮影技術を知ることは今後非常に重要なテーマになると考える。そこで今回は術前のみならず術後の再発所見やコイルアーチファクトを知ることで、術後3DRAの考え方や今後の展望など、普段あまり聞くことが少ない術後の撮影技術についても扱っていく。
血管撮影室での業務はCTやMRIと異なり、各施設で診療放射線技師の介入度合いが大きく異なるのではないだろうか。その中で我々が血管撮影室で何を求められているのか、その答えを術前、術中、術後の手技の流れや治療ストラテジーから逆算して、臨床的な観点と我々診療放射線技師ならではの観点から紐解いていきたい。上記の多岐にわたる内容を40分間という限られた時間ではあるが、基礎的な内容から最新のトピックスやトレンドについて、時間の許す限り扱っていく予定である。

教育講演3 第2会場2階くじゃく 9:20~10:20

座長 聖マリアンナ医科大学病院 前原 善昭

読影補助~画像をどのように読み解くか~

横浜旭中央総合病院放射線科  佐藤 秀一

 疾患は色々あるが、今回は急性腹症、その中でも基本となる急性虫垂炎と急性胆嚢炎を中心に鑑別となる疾患を含め解説する。
虫垂炎は急性腹症で外科的な処置が必要となる最も一般的疾患であり、右下腹部痛の代表的疾患でもある。そのため右下腹部痛の原因となる憩室炎や感染性腸炎などと鑑別しなければならない。日常診療におけるCTの役割は重要である。

参考のため虫垂炎のまとめを記載する。
虫垂炎の病理分類と CT所見
虫垂炎は虫垂起始部の閉塞により発症する。
虫垂炎は以下の 4 型に分類される。

  • カタル性虫垂炎:造影CTでは、軽度の壁肥厚と壁の軽度濃染がみられ、周囲脂肪層の混濁は認めない
  • 蜂窩識炎性虫垂炎:造影CTでは壁は肥厚し、壁の均一な濃染を認める。炎症が襲膜まで及んでいると軽度周囲脂肪層は混濁し、少量の腹水を認める。
  • 壊疽性虫垂炎:造影CTでは不均一な壁肥厚と濃染を認め、壁の層構造の消失を示す所見を認める。囲脂肪層混濁が強い。
  • 穿孔性虫垂炎:造影CTでは壁の連続性は途切れ、その周囲に膿虜形成を認める。麻痩性腸閉塞の出現や虫垂外の糞石の逸脱。

虫垂炎の CT所見

  1. 液体で充満し腫大した虫垂:外径6 ~ 7 mm以上で、内部にガス像なし。
  2. 虫垂壁の全周性肥厚3(mm以上)と壁の造影増強効果壁(3 mm以下でも)。
  3. 虫垂周囲脂肪層の混濁:炎症が襲膜面を超えている。つまり蜂窟織炎性以上。
  4. 虫垂石:25%。 上記1 )から3 )にこれがあれば穿孔の可能性が高い。
  5. 虫垂内液体貯留:内2径.6mm 以上に貯留。
  6. 囲蜂高織炎や膿瘍形成。
  7. 消化管外ガス像。
  8. 腸間膜リンパ節腫大。
  9. 盲腸の虫垂入口部の壁肥厚。
  10. CT arrow head sign。
  11. 周囲腸管壁肥厚。

の所見がみられ、1. から3. で、感度・特異度ともに94~98%となる。

*穿孔性虫垂炎のCT所見

  • 特異度も感度も高い:虫垂壁の欠損所見。
  • 特異度の高い所見:膿霧形成、腸管外ガス像・便像(dirty mass)、麻痺性腸閉塞所見。

経験的に虫垂炎で糞石を内腔に認め、糞石周囲の内腔に違和感のあるガス像がある場合は、壊痘性虫垂炎や穿孔性虫垂炎の可能性が高い。

虫垂炎と鑑別すべき疾患

虫垂粘液嚢腫

虫垂が閉塞し、虫垂粘膜が粘液産生を持続し粘液が貯留し、虫垂が拡張した状態。  粘液貯留、過形成、腫虜化へと進行する虫垂の嚢状拡張である。
腹膜偽粘液腫は6 %に生じ、粘液轟胞腺腫と粘液轟胞腺癌の破裂による。虫垂炎との鑑別は拡張が強く、壁は薄く、拡張の割に周囲脂肪層の混濁がない。拡張した虫垂粘膜面に沿った点状や線状の石灰化がみられたら特徴的。

虫垂憩室炎

ほとんどが仮性憩室。
虫垂炎切除の0.3%に虫垂憩室炎がみられる。穿孔率が虫垂炎の4倍と高い。

教育講演4 第2会場くじゃく 10:20~11:00

座長 横浜労災病院 渡邊 浩

医師が求める画像を提供するために知っておきたいこと

横浜旭中央総合病院放射線科  野末 高弘

 2010年に厚生労働省より「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」の通知が発せられ、診療放射線技師(以下放射線技師)による読影の補助が求められている。
日々の業務において、検査を担当した放射線技師より臨床医や影医読に検査画像以外の情報をフィードックすることも読影の補助の一部であると考えており、実際の臨床の現場では円滑に検査を行う上で重要な要素の1 つである。
読影医においては、実際の患者の状態を知るのは困難な場合が多い。
検査に来た患者が歩行可能であったかどうか、痛み程の度はどうであったかなどの情報でも読影の助けになることもあり得る。
また、患者の身体所見や血液データから読み取れることをどれだけ知っているかで検査の際にある程度の見当をつけて検査に望む事ができ、見逃したくない画像所見を見つける助けになる。
依頼目的を読み解き、理解をすることによって目的にそった検査方法の案提や医師が見やすい画像の提供をすることが出来る。それが実践出来れば次回の検査につながる大きな経験値を得ることに繋がるはずである。
我々放射線技師は検査を受ける患者の様子とその患者の画像所見の両方を知ることができ、最初に画像を閲覧する事が出来る職種である。そのため緊急を要する見逃したくない疾患の身体的な特徴や画像所見を知っておくことは非常に重要である。
休日-夜間帯の業務において、撮影の現場で依頼医師に情報のフィードバックが必要な場面になった時に困らないために、知っておくべき事は何なのか?どのような勉強法があるのか?医師とコミュニケーションをとるために身につけておくべき技術について考え、当院で実際に行っている方法を紹介する。

公益社団法人 神奈川県放射線技師会 TEL 045-681-7573 平日13:00~17:00

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